
去年の夏頃、
子どもと子どもの関係に興味を持ちまして...。
まだ社会にあまり接していないうちに、子どもが他の子どもにどう興味を示して、
どのように関係を築いて、どうやって「友だち」になって、
いつしかそれを、どうやって選別するようになるのかっていうのを、
書いている人や本はないかなと探したりしてました。
が、なかなか無くて...。子ども単体や、親や大人との関係、
子ども同士の関係でも、いじめなど特定な社会的な問題に特化したものしか無くて。
で、心理学系を探しても無くて、生物学系を探してたら、
少し近いことが書いてありそうな本を見つけました。
「進化と人間行動」長谷川寿一 長谷川眞理子 東京大学出版会 2,500円+税。
大学の教養部の適応行動論...?の教科書ですか...ねえ。
子どものことではなくて、ヒト全体の話が論じられています。

ヒトであれば、すべての個人が備えていると考えられる、
心を含めた基本構造について、概論で紹介されています。
「本書の大きな狙いは、自然科学と人文社会学を橋渡しすることにある」
「理系、文系を問わず、これらの学問を統合して、人間理解のために共通の基盤を築けるものがあるとしたら、」というのも、惹かれます。
人と人の関係に関連する「協力行動」の他にも、
血縁関係に関連する「血縁淘汰」と「血縁者間の葛藤」や、
性差と繁殖に関連する「性淘汰」と「配偶者選択」「配偶者防衛」など。
それぞれ非常に興味深く、面白い。
進化生物学という、人に対する1つの客観的な視点もあるのかと。

適切に引用することができないので、考え方だけを紹介しますと...。
「適応度の増大を促す自然淘汰の圧力のもとで、自己の適応度を下げてまで他の個体の利益をもたらすような行動はなぜ進化できるのだろうか...」に対する1つの答えとして、W.D.Hamilton氏の「包括適応度(inclusive fitness)と血縁淘汰(kin selection)」という理論。
Trivers氏の「親の
投資」や「親子間の葛藤」という理論。少し引用すると、
「...生残する子の数が最大になるように親が子どもに投資するように進化してきたとするならば、親が現在の子の生存率を上昇させるためにその子の世話をしていると、その行為の代償として、次の繁殖機会を犠牲にしていることになります。子に対する授乳や保護などは、その子の出生直後には不可欠ですが、子が成長するにつれて、過剰な投資は限られた親の資源やエネルギーを浪費することになります。つまり、親はどこかの時点で、子に対する投資を打ち切らなければ、次の繁殖に移れません。それが子離れ、哺乳類で言えば、離乳の時期ということになります。
ところが、最適な離乳の時期については、親の立場と子の立場でずれが生じます。なぜかというと、子にとって自分自身の血縁度は1ですが、次に生まれてくるきょうだいと自分との間の血縁度はr=0.5...なので、子は親の自分に対する養育のコストを半分にしか評価しないからです。その分、子は親の最適値より多くの(...)投資を要求します。...」と。

こちらもTrivers氏の「互恵的利他行動(reciprocal altruism)」という理論。
「...ある個体が他個体に対して利他行動をとるときには、一定の適応度上の損失をこうむるが、その個体が、将来、利他行動をしてあげた個体から同じような恩恵を受ければ損失が解消でき、そのような社会交渉が繰り返されれば、長期的には、両者ともに適応度が上昇する...」と。
これを受けてCosmides氏とTooby氏は、互恵的利他行動の成立について、
「...コストを払ったものだけが後に受益者になれる、すなわち、受益者になるためにはコストを払わねばならない、...これこそが社会契約の基本原理だと...。...社会契約が維持されるためには、コストを払わずに受益者になるような裏切り者をいち早く発見するような『心理メカニズム』を持つように強い淘汰が働いてきたと考えた...」と。
Trivers氏は、「微妙で不安定な互恵的な関係から生まれた感情」として、
「(1)友情と好き、嫌いの感情...
(2)道義的な攻撃...
(3)感謝と同情...
(4)罪悪感それを償うための利他行動...」と。

ヒトの配偶
システムでは、
「...哺乳類の一員であるヒトでは、男性の潜在的な繁殖速度の方が女性のそれよりも速く、繁殖成功度の偏りは、男性の方が女性よりも大きい...。」と。
配偶者選択では、
「...つまり、進化的に、ヒトの繁殖にかかわっていた淘汰圧が男女で異なり、男性は、繁殖力の高い女性を何人配偶者にすることができるかによって自らの適応度が制限されており、女性は、資源をどれだけ自分に提供してくれる男性と配偶できるかによって自らの適応度が制限されてきた...」と。
「配偶者防衛は、一方の性の個体が、自分の配偶相手を同性の他個体から防衛し、自分としか配偶しないようにする行動です。これは、ほとんどの場合、雄が雌に対して行いますが、それは雌が複数の雄と交配すると精子間競争が起きることになり、子の父性が不確実となるので、それを防ぐための雄の戦略であると考えられます。...ヒトは、女性が
妊娠して出産する哺乳類の一員ですから、精子間競争が起これば、子の父性の不確実性はつねに生じてきます。そこで、男性が子に対して大きな投資を行う場合ほど、男性による配偶者防衛が強く働くと予測されます...」と。
「男性は、女性の性行動をコントロールすることによって自らの適応度を上げることができますが、女性は、男性の性行動それ自体をコントロールしても、自らの適応度の上昇にはつながりません。...生涯繁殖成功という観点では、男性が女性をコントロールすることによって得るものの方が、女性が男性をコントロールすることによって得られるものよりずっと大きいので、相対的には男性のコントロールの方が顕著に現れるようになります。資源をコントロールすること、権力を持つこと、暴力を振るうことは、女性の繁殖力のコントロールにつながり、それによって自らの適応度が上がったからこそ、家父長制的な習慣や社会制度、価値観が生み出されたのです。...」と。
「...ヒトにおいて配偶者防衛が、男性の重要な繁殖戦略となった原因は、排卵の隠ぺいと女性による積極的な配偶者の選り好みだったのではないでしょうか。発情のシグナルが消え、女性が積極的に相手を選り好みをするようになると、どうしたら男性の適応度は上がるでしょうか? 一つは、女性に気に入られることでしょう。互いの魅力や性格の一致が配偶者選択の重要な鍵になるのは、この部分においてだと思われます。
しかし、いったん資源と生計の手段が独占できるものになり、富が蓄積できる形のものになると、男性には、それを独占して蓄積し、女性をコントロールすることによって、自らの適応度を上昇させる新しい道が開けました。資源は無限に独占できるものではないので、男性がそのような戦略を取り始めると同時に、男性間の競争が厳しくなり、男性間に不平等が生じるようになります。...」と。

と、いうことで、私が勝手に想像すると、今の日本などの社会で、
女性が自らの資源や生計の手段を男性に独占されなくなると、配偶者選びは、
哺乳類の本来的な、女性が男性を選ぶ方向に働いていくのでしょうか。
さらに、一夫一妻制度の元では、精子間競争も弱いので男性間の争いは弱まり、
男性は主に女性に気に入られるために、ふるまうようになるのでしょうか。
そして、女性は自らとその子に、できるだけ多くの資源を提供してくれる男性を
常に追い求めるようになるのでしょうか。
ただ、男性は資源の蓄積の意味がなくなり、配偶者防衛の手段もなくなるので、
そうすると、母系の母子の血縁のつながりによって家族が構成され、
そこに子どもによってつながる複数の男性が関わっていくような、
家族と社会スタイルになっていくのでしょうか。
どうもペア.ボンドの根拠は、まだよく分からないらしいので。
一夫一妻制度の元なので、その時点での結婚相手は1名なのでしょうけど。
その時に、男性はどういう行動をとるのでしょうか...。
資源や生計の蓄積よりも、女性に気に入られるために行動するって...。
言われるがままに振る舞うのか、はたまた、自らを飾り立てるのか...。
でも、そういう方向に社会が動いているようにも、感じたり...。

結局、長くなってしまいました。
訳が分からないと思いますが、ここまで読んでいただいて、
ありがとうございますm(__)m...。